ラムとマトンの違い
日本の売り場で「ラム」と書けるのは生後1年未満の羊の肉、「マトン」は生後1年以上の羊の肉です。品種でも部位でもなく、年齢の区分です。全国食肉公正取引協議会の「食肉の表示に関する公正競争規約」の施行規則で決まっていて、「羊肉」「めん羊」「羊」と書くこともできます。
日本の決まり
この規約は、業界が自分たちで作り、景品表示法にもとづいて公正取引委員会と消費者庁長官の認定を受けた自主的な決まりです。最初の認定は1995年で、直近の変更は2024年10月1日から施行されています。国が作った食品表示基準の Q&A には、「羊肉」「ラム」「マトン」の名前の基準は書かれていません。羊肉の呼び分けは、この規約に任されている形です。
1年という線は、日本で売るときの線です。生まれた日から数えて1年未満ならラム。1年を過ぎればマトン。「和牛」のように品種や生まれ育ちを問う言葉ではなく、国産牛のように産地を問う言葉でもありません。
輸入元の決まり
輸入される羊肉には、輸出する側の国にも「ラム」の定義があります。ただし、日本の1年とは決め方が違います。
オーストラリアの輸出規則では、ラムは12か月齢未満の羊の肉、または永久切歯(前歯の永久歯)が萌え出ていてもまだ摩耗していない羊の肉。マトンは、永久切歯が1本以上摩耗している雌、または同じ条件の去勢した雄(雄の性徴が出ていないもの)の肉です。誕生日ではなく、歯を見て決めます。2019年7月に、それまでの「永久切歯が0本」から、いまの「摩耗していなければよい」に定義が変わり、業界規格の AUS-MEAT Language も同じ文言になりました。
業界規格には、ラムとマトンの間に「ホゲット」という区分もあります。永久切歯が1本か2本摩耗している雌か去勢した雄の肉で、政府の輸出規則には無く、業界の格付だけの言葉です。
ニュージーランドの格付でも考え方は同じで、ラムは12か月齢未満、または永久切歯が摩耗していない若い羊。ホゲットは永久切歯が2本までの若い雄か未経産の雌。マトンは永久切歯が2本を超えて摩耗した雌か去勢した雄です。こちらの格付は任意の制度と明記されています。
売り場で見るなら
「ラム」の札は、日本の決まりでは1年未満、輸出元の決まりでは歯で見た若さ、どちらにしても「若い羊」の意味で、品種のことは何も言っていません。農林水産省の「めん羊・山羊をめぐる情勢」は、サフォーク種やドーパー種などの品種を「ラム肉の生産が主体」といった形で紹介していますが、そこでもラムの月齢や体重の基準は決めていません。国産の羊肉に「○○ラム」のような名前が付いていても、それは産地や生産者の付けた名前で、ラムという言葉の意味は変わりません。